KAISEIブログ - 高校卒業式 校長式辞

高校卒業式 校長式辞

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校長より
 
2018/3/5 14:28

「気候」という言葉は、二十四節気の「気」と七十二候の「候」から生まれたものです。日本人は、伝統的に花や鳥、気象などの天地自然の変化を繊細にとらえた暦(こよみ)の世界に寄り添って暮らしてきました。「気候」の「候」を表す七十二候、今の時期は、「草木萌動(そうもくほうどうす)」。草木(くさき)が芽吹き始める頃です。冬枯れの野山の木々に、薄緑色の小さな息吹が現れます。この時季に降る雨を「木(き)の芽起こし」と言い、植物が花を咲かせるために大切な雨を意味します。
そうした新しい息吹を感じられる今日のよき日、ご来賓の皆様、そして、卒業生の保護者の皆様のご臨席をいただき、「平成29年度 開星高等学校 卒業証書授与式」を挙行できますことは、私ども本校職員にとりまして、誠に喜びとするところでございます。本校を代表いたしまして、深く感謝申し上げます。


さて、3年生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
私は毎年、この場で卒業生の皆さんに餞の言葉を贈っています。今年度は、<素直>という言葉を贈ります。
この言葉についてお話する前に、4日前に閉会した平(ピョン)昌(チャン)オリンピックについて触れます。今回、日本は冬季大会史上最多の13個のメダルを獲得しました。競技そのものにも感動しましたが、試合後の選手が語る言葉にも素晴らしい学びをいただくことが多くありました。
 今回のメダリストの一人、小平奈緒選手は、スピードスケート女子500メートルで優勝した翌日のインタビューで、次のように語っていました。
金メダルをもらうことは、とても名誉なことですし、うれしいことです。けれど、メダルよりも私自身の中では、これからどういう人生を生きていくかが、より大事になってくると思います。
この言葉のように、小平選手は人間としての生き様を大切にしていることが、結果的にスポーツの世界でも頂点に達したと私は考えます。
 金メダルを取れる選手は、単にそのスポーツに優れているだけではなく、人間としての器が大きく深いように思います。ある日本の金メダリストが大切にしている表彰状の文面を紹介します。
 あなたは、教室で暴れたり仲間をいじめたり、我々同級生に多大なる迷惑をかけました。しかし今回のオリンピックにおいては我々同級生の期待に応え、不慮のケガにもかかわらず持ち前の力を発揮して見事に金メダルを獲得しました。このことはあなたの小学校時代の数々の悪行を清算しても余りあるものであり、我々同級生は心から誇りにするものであります。よってここに表彰し、最大の敬意を払うと共に、永遠の友情を約束するものであります。
 
この表彰状は、もう30年以上も前になりますが、1984年のロサンゼルスオリンピックにおいて、柔道無差別級で優勝した山下泰裕(やすひろ)氏が、大会直後に小学校時代の同級生からもらわれたものです。山下さんによれば、自宅の書斎には、オリンピックの金メダルも、その後受賞された国民栄誉賞の賞状など何一つ飾っていないそうです。ただ大事に飾っているのは、この同級生がくれた表彰状だけということです。
 山下さんは、小学校時代、とんでもなく暴れん坊だったそうです。ご両親は、「この子は将来、人様から後ろ指を指されるようになるのではないか」と、とても心配されました。そんな時、近所に柔道場ができたので、「柔道をすれば人様に迷惑をかけない人間になるかもしれない」とお母さまが考えられ、山下さんと柔道とのつながりができました。そして、山下さんに大きな影響を与えたのが、中学時代の柔道部顧問の白石礼介先生です。山下さんは、こう語られています。
普通だったら「やらされてやる稽古じゃなく、自分から進んでやる稽古をしろ」とか「しっかり目標を持て」とか「人の二倍、三倍稽古せよ」とか言われますよね。でも白石先生は「強くなるには素直な心が一番大事」と言われました。さらに、先生は「これはスポーツだけではなく、人生全般に通用する話だ。『一流』とか『本物』と言われる人物は皆、素直な心、謙虚な心を持っておられる」と言われました。
山下さんは、この白石先生の言葉を大切にして歩まれ、先に紹介したようにオリンピックでの優勝をはじめ、何度も世界一に輝かれました。その山下さんは、こうも話しておられます。
オリンピックで優勝し、国民栄誉賞までいただいたおかげで、私は普通では会えないような各界の一流の方や「本物」と言われる方たちと、これまでたくさんお会いしてきました。すると白石先生がおしゃっていたように、どの方も威圧感がなく、誰に対しても態度が変わらないし、誰からも何かを吸収しようという心構えが感じられました。
このように、それぞれの世界で一流になった人は、人間としての基盤がしっかりできている人、本校の「建学の精神」にある言葉を使えば、「品性」が磨かれている人ではないでしょうか。山下さんと同様に<素直>な心を大切にした人に、パナソニックの創業者、松下幸之助氏がいます。松下さんは、「経営の神様」と呼ばれましたが、経営についての松下さんの考えは、経営という一つの枠の中だけで物事を考えたのではなく、いつも経営の枠を超えて宇宙とか自然とか、我々を取り巻くすべてのものに考えを及ぼし、そこで得られた結論を経営に応用しました。その得られた結論とは、<素直>な心になって自然の理法に従うことでした。松下さんは、こう語っています。


本当の素直とは、自然の理法、すなわち本当の正しさに対して素直であること。自然の理法は、なすべきことをやっている。早い話が、お日様はきちんと東から出て、西に沈む。春が来て、夏が来て、秋が来て、そして冬が来る。人間のなすべきことをきちんとやれるかどうか。逆に、なすべからざることは絶対にやらない。そういう振る舞いができるかどうか。自然の理法に従うというのは、決して易しいことではない。本当の素直さが必要だ。
この松下さんの言葉は、先に紹介した山下さんの恩師の言葉、「強くなりたければ、素直になれ」にもつながると思います。
今年の卒業生の中には、3人もそれぞれの競技で高校生日本一になっています。それぞれ、卒業後も、さらに広い世界で頂点を目指してほしいと思いますが、その際、その基盤となるのは、<素直>な心づかいで品性をしっかり磨くことであると意識して歩んで行ってもらいたいと願っています。このことは、3名に限らず、ここにいるすべて卒業生の皆さんに期待しています。


卒業生の皆さん、<素直>な心づかいを大切にして、これからの人生を歩んでください。メダリストや経営者になることがすべてではありませんが、それぞれの道において、人生を<素直>に歩み、本校の校名「開星」の由来の如く、社会の発展に役立つ有望な人材に成長されることを祈念して、私の式辞を終わります。
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